猫を守るためのワクチン接種。必要性と種類について

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猫を自宅に迎えるにあたり、ワクチン接種、予防接種を受けてくださいと案内をされたことがあるかと思います。怖い感染症から猫を守るために、必要となるのがワクチン接種です。この記事ではワクチン予防接種によって防げる病気、適切な接種時期、リスクなどについて紹介します。

猫の混合ワクチンの種類

猫の混合ワクチンは「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」の大きく分けて2種類が存在します。コアワクチンは完全室内飼育だったとしてもすべての猫に接種すべきワクチンとされ、ノンコアワクチンは猫の生活環境による感染リスクによって接種すべきかを検討すべきワクチンとされています。動物病院ごとに取り扱っている種類が異なるため料金やワクチンのバリエーションは変わります。
一般的には3種混合ワクチンでは「猫ウイルス性鼻気管炎」「猫カリシウイルス感染症」「猫汎白血球減少症」が予防できます。4種では「猫白血病ウイルス感染症」5種では「猫クラミジア感染症」が加えられます。また、単体では「猫免疫不全ウイルス感染症」のワクチンもあります。

子猫の接種時期

生まれたての子猫は、生まれて24時間以内に母猫から出るお乳(初乳)を飲むことで母猫から抗体を譲り受けます(移行抗体)。ただし、移行抗体は徐々に消えていくため、子猫自身の免疫力をつけるため混合ワクチンの接種が必要になります。
初回の「コアワクチン」を6〜8週齢で接種し、16週齢以上になるまで、多くの場合3週間隔で3回予防接種をおこないます。

成猫の接種時期

WSAVAのワクチネーションガイドラインでは子猫の時期に着実に免疫を獲得すれば、コアワクチンは3年以上ごと、ノンコアワクチンは1年ごとの接種を推奨しています。仮に完全室内飼いであっても飼い主が外からウイルスを持ち込む場合があります。完全室内飼いであってもコアワクチンである3種混合ワクチンは、3年前後で接種をするのがよいと言われています。また、猫が外に出る場合、感染した猫と接触する危険が高いので、猫白血病ウイルス感染症を加えた4種や猫クラミジア感染症を加えた5種、猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)単体ワクチンなどが必要な場合もあります。

猫の混合ワクチンは毎年必要?

猫ワクチンにも副作用もある

今までに予防接種によってアレルギー症状・アナフィラキシーショックが出てしまった、免疫不全やがんなどの持病がある、高齢であるなどでワクチン接種が心配な場合は、抗体がどのくらい残っているかを血液検査で調べる「抗体価検査」という検査があります。抗体価検査にも費用が発生するため、抗体価が低く、結果接種をしなければならない場合は余計に費用が発生してしまいますが、過度なワクチン接種を避けたい場合には有用です。

コアワクチンで予防できる感染症

猫のコアワクチンの対象は、「猫ウイルス性鼻気管炎」「猫カリシウイルス感染症」「猫汎白血球減少症」です。

猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)

「猫風邪」とも呼ばれる感染症のひとつ。猫ヘルペスウイルスが原因で、感染した猫との接触やくしゃみなどの飛沫によって感染が成立します。発熱、元気消失、食欲不振、目脂、結膜炎、くしゃみや咳などの症状が発生し、多くは回復しますが、悪化すると二次感染によって上部気道炎や副鼻腔炎は発生します。原因である猫ヘルペスウイルス1型は一度感染するとリンパ節に潜伏感染し再発する場合がありますが、感染する前ならワクチン接種が有効です。慢性的な歯肉炎や鼻汁、結膜炎などに罹患している元外猫で多くみられます。

猫カリシウイルス感染症

猫カリシウイルスが原因で、罹患した猫との接触やくしゃみなどの飛沫によって感染し、発熱、元気消失、食欲不振、くしゃみ、鼻水、流涙、舌や口腔内に水疱や潰瘍ができます。口腔内に痛みも伴うためよだれも多く、悪化すると肺炎を起こすこともあります。

猫汎白血球減少症

猫パルボウイルスが原因で、症状の進行が早く、死亡率の高い感染症のひとつです。糞やウイルスに汚染された環境から経口・経鼻感染し、血流に乗って全身に運ばれます。嘔吐や血便を起こし、白血球数が著しく低下し急死する場合もあります。子猫の場合は死亡率は90%以上と高く、パルボウイルスは環境下で長く生き続けるため、食器やケージ、トイレなどを塩素系の消毒薬で長時間の消毒することが必要です。

ノンコアワクチンで予防できる感染症

ノンコアワクチンは、「猫白血病ウイルス感染症」「クラミジア感染症」「猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)」を対象にしたワクチンです。

猫白血病ウイルス

猫白血病ウイルスを原因として、貧血や免疫力低下、流産、腎臓病など様々な症状を引き起こし、ほとんどが3-4年以内に死亡します。腫瘍を形成したり、白血病にもなりうる疾患です。ウイルス自体は弱く、感染しても1歳以上の猫では、持続感染となるのは10%程度です。感染猫との濃厚接触、ケンカなどの咬傷を原因とすることが多く、垂直感染(母子感染)もあります。グルーミングの際の唾液やトイレの共有、咬傷などにより、生まれたてでは100%、離乳期を過ぎた時期は50%で持続感染になると言われています。感染から発症までに2〜6週間と比較的時間がかかり、発熱、元気消失、食欲不振、貧血、体重減少など、免疫不全による口内炎や肺炎などが見られることもあります。

猫クラミジア感染症

原因はウイルスではなく、「クラミドフィラ・フェリス」という細菌です。眼瞼痙攣、結膜炎を引き起こし、感染猫との濃厚接触で発生しやすく、1歳未満の猫に蔓延しやすい傾向にあります。グルーミングなど、密接な接触で分泌物にふれて感染することが多いです。

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)

FIVを原因として、接触、特にケンカなどの咬傷による確率が高く、垂直感染(母子感染)も発生します。子猫の場合、感染をしていなくても移行抗体により抗体検査で陽性と判定されることがあり、時間の経過で抗体が陽性から陰性になる場合もあるため、複数回の期間を開けた検査が推奨されます。潜伏期間は4〜6週間あり、感染後の病期ごとに症状が異なります。特徴としては、急性期(発熱・下痢・全身のリンパ腫大が数週間〜数ヶ月続く)→無症候キャリア期(数年から10年以上臨床症状が認められない時期)→持続性全身性リンパ節期(全身のリンパ節が腫大する)→AIDS関連症候群(免疫異常が始まり、歯肉炎・口内炎・上部気道炎などが起きる)→AIDS期(末期になると、著しい体重減少、日和見感染など)。

このように重篤になる可能性がある疾患が多いため、猫の生活スタイルに応じてワクチン接種を行うことが推奨されます。

記事執筆者
長江嶺(金乃時アニマルクリニック・獣医師)
略歴:東京都内の動物病院、神奈川県内の動物病院の勤務医を経て、現在は横浜市を診療エリアとする往診専門の動物病院を運営しています。詳しいプロフィールはこちらです。

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