犬の麻酔のリスク

犬における麻酔事故の概要
麻酔事故の発生率が高くなる基礎疾患
注意すべき犬種


犬における麻酔事故の概要

 

高齢の犬が増えている昨今、様々な基礎疾患を抱えつつ麻酔をかけた検査や手術をすべきかを迷われる飼い主さんが多くいらっしゃします。厳密には高齢だからリスクが高いわけではなく、加齢に伴って様々な疾患のリスクが高まるからリスクが上がるものと考えられます。

 

犬における麻酔事故の概要

犬の麻酔に関連した死亡率は0.17-0.65%といわれており、人の0.01-0.05%と比較すると10倍近くの差があることがわかります。これは生物学的な差によるものだけではないかと思いますが、結果としては獣医療においては人の麻酔以上のリスクが伴います。
また、これらの麻酔事故の多くが術後3時間以内に発生することが明らかとなっています。

 

麻酔事故の発生率が高くなる基礎疾患

麻酔事故に関連するリスクファクターは以下の通りです。これらの状態が起こりうる疾患はリスクの高い基礎疾患として注意が必要です。

・意識レベルの低下
・麻酔前評価(ASA-PS分類)3-5
・白血球数が多い
・血糖値が低い
・ALT(肝数値)が高い
・Clイオンが高い
・低酸素血症
・頻脈
・低体温

これらの病態には全身性の炎症性疾患の関連が示唆されており、例えば子宮蓄膿症、胆嚢粘液嚢腫、胃腸間内異物、胃拡張胃捻転症候群などの敗血症性腹膜炎などが挙げられます。

 

注意すべき犬種

麻酔事故の原因臓器としては循環器や呼吸器が最も多いとされていますが、パグやフレンチブルドッグなどの短頭種によくみられる気道の閉塞や狭窄が問題となることがあります。
そのため、これらの犬種の麻酔や覚醒には十分に注意を払う必要があります。

上記のように、どのような状況では麻酔のリスクが高くなるのかを十分理解することで、今後の麻酔下の手術や検査の決断の一助となればと思います。

 

※参考文献:犬の治療ガイド2020. 2020,8,1.p92-95

記事執筆者
長江嶺(金乃時アニマルクリニック・獣医師)
略歴:東京都内の動物病院、神奈川県内の動物病院の勤務医を経て、現在は横浜市を診療エリアとする往診専門の動物病院を運営しています。詳しいプロフィールはこちらです。

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