犬猫の異物の誤食、誤飲

・犬猫の異物の種類
・異物の確認事項
・異物の治療の選択
・飼い主の対応

異物の誤飲や誤食は犬猫では比較的多いトラブルの一つです。飼い主の目の前で行われた場合もあれば、何かを食べた気がするというあいまいな場合もあり、その量や種類、食べてからの時間によって対処が大きく変わる疾患です。経過観察や内科的な治療で済むものから内視鏡や開腹手術が必要なケースまで様々あり、かつ、厄介なことにこのような異物を食べる癖のある動物は繰り返し同じトラブルを起こしうることがあります。どのようなものが危険で、もしもの場合の対処を知っておくことも重要です。

犬猫の異物の種類

ここでは異物が食道や気道を通り抜けて胃へ到達した場合について記述します。胃や腸への異物が起こし得るトラブルというのは多くは物理的な障害を伴うものです。通常の成人では考えられないようなものもあり、靴下などの衣類やオモチャ、金具やピアスなどの金属、ビニール袋やペットシーツ、猫では布やクッションから出る紐など様々です。また、物理的には問題にならなくても化学物質が問題となる場合もあり、消炎鎮痛剤を含有する湿布や中毒で有名なネギが刺さったままの竹串、乾電池などが消化管粘膜や全身に悪影響を及ぼすケースもあります。

異物の確認事項

異物の大きさ・形状・材質

異物の大きさ、形状、材質は必ず確認しなければなりません。体の大きな大型犬にとっては問題にならなくても体の小さい若齢犬猫や小型犬にとっては消化管閉塞などのリスクとなるものがあります。基本的に胃の中に留まっていれば嘔吐させる処置が可能ですが、先端が鋭利なものや胃の噴門や食道を容易に通過できないものだとかえって危険となる場合があります。また、胃や腸の粘膜にこびりつくような粘度の高い物質は仮に催吐が成功しても完全に除去するのは難しいかもしれません。

食べた時間と食事の時間

異物摂取の時間が数時間以内であれば胃の中に留まっている可能性が高く、催吐処置の適用も考えられます。ただし、小さいものや液状のものは胃から腸への通過時間が短くなる場合があります。反対に、胃の幽門から十二指腸を通過できないような大きなものは消化されない限り胃の中に留まります。

異物誤食が実際に目撃されていない場合

食べたかもしれない、食べたとしてもどの程度か分からないという場合は多くあります。
実際に処置に進んでしまうと最悪開腹手術にまでなってしまうため、レントゲン検査や造影検査、超音波検査などが進められますが、実際にはレントゲンに写らないものも多くある為、確実にないとは言い切れない場合があります。その場合は、食べた可能性のあるもの危険度や麻酔リスク、現在の症状によって相談となります。

異物の治療の選択

異物の形状や場所によっていくつかの選択肢がありますが、おおまかには無処置(内服薬のみ)、催吐処置(基本的には静脈注射)、内視鏡、胃切開や腸切開、腸切除などの外科手術になります。
催吐処置が難しい場合は内視鏡となりますが、食事をしたばかりで胃の中に大量の食渣が残っている場合は視界の確保が難しいケースがあったり、内視鏡では摘み出せないような大きさ、形状のものもあります。
一方で、例えば腸に異物が詰まっている場合、1.2箇所であれば外科切除可能ですが、大量の砂やビーズのような広範囲に広がるものでは切除箇所が定まらず困難なケースがあります。

飼い主の対応

飼い主のできる対応として、まずは様子を見ずに早めに病院へ連絡する事です。胃の中なら催吐処置や内視鏡で済んだものでも、時間が経ってしまったせいで対処が変わる場合も多いからです。異物が疑われる場合に往診を依頼される場合がありますが、ごく一部のケースを除き、施設病院への受診を推奨しております。自宅でも催吐処置までは可能ですが、上手く吐かなかった場合には次の手が必要になること、往診を待つ間に状況が変わってしまう可能性を否定できないからです。
また、食べたものと同じものがあれば持参しましょう。レントゲンで一緒に撮影したり、大きさの指標にする事が可能です。

※参考文献：猫の治療ガイド2020. 2020,8,1.p87-89