猫の膵炎

・猫の膵炎の病態
・猫の膵炎の診断
・膵炎の治療方法
・予防と予後


 

猫の膵炎は嘔吐や食欲不振などの非特異的な症状で受診、発覚することの多い疾患ですが、症状や診断方法が非常に煩雑です。病理検査にて確定診断となりますが、侵襲度の高い検査になりますので、除外診断をしながら暫定的に治療を開始することが多い疾患です。また、非常に軽症のものから死に至る重度のものまで症状の幅が広く、油断のできない疾患でもあります。


猫の膵炎の病態

猫の膵炎は炎症性の疾患の一つであり、急性と慢性に分類されます。何らかの原因によって膵臓からの消化酵素が活性化し(過剰に放出され)、自己消化が引き起こされると考えられています。また、猫の慢性膵炎では膵臓の近位に位置する胆管、腸の炎症とも関連性が示唆されており、「三臓器炎」を発症していることが多いとされています。


猫の膵炎の診断

 

急性膵炎の臨床徴候は食欲不振や活動性の低下など非特異的で、嘔吐や下痢のような消化器症状を伴わないこともあります。
レントゲン検査での腹膜炎や麻痺性イレウス(消化管拡張)などが認められる場合もありますが、膵炎特有の所見ではありません。
また、腹部エコーでは腫脹した膵臓や周囲の脂肪組織の炎症所見が認められることがあります。血液検査では膵特異的リパーゼが有効ですが、これも重症度や慢性度によって差があり、単独での確定診断には用いられません。
このように、非常にわかりやすい所見が揃う場合もありますが、CTや生検を行う余裕がなく、治療に入ることも珍しくありません。


膵炎の治療方法

 

主に、静脈点滴、鎮痛薬、栄養補給、制吐薬、抗炎症薬、胃粘膜保護が行われます。
どれも膵炎特有の治療法や治療薬ではありませんが、全身状態を維持し、膵臓の灌流を促すことが重要です。また、嘔吐や疼痛は悪循環を助長するため、可能な限り予防することが望ましいとされています。


補助的な治療

 

一般的には猫の膵炎は無菌性ですが、二次感染や上向性の胆管炎などが疑われる場合は抗菌薬も併せて投与します。
また、慢性膵炎によってビタミンB12の欠乏や糖尿病、膵外分泌不全、DIC(止血凝固異常)を併発している場合は加療されます。


予防と予後

 

猫の膵炎は診断が明確でなく症状も非特異的であるため、通院にてひとまず点滴や制吐剤を投与して帰ってくる場合が多くみられます。その一方で重症で回復不能となる症例も少なくないため、早期の治療開始が望まれます。
検査も多くなってしまうので金額的な問題もありますが、治療が長期的になるリスクを考えて飼い主側から相談・提案していくことも重要です。


※参考文献:猫の治療ガイド2020. 2020,8,1.p365-367

記事執筆者
長江嶺(金乃時アニマルクリニック・獣医師)
略歴:東京都内の動物病院、神奈川県内の動物病院の勤務医を経て、現在は横浜市を診療エリアとする往診専門の動物病院を運営しています。詳しいプロフィールはこちらです。

CONTACTお問い合わせ・予約

診療時間:10:00~19:00
【土日祝も診療】
※事前予約・不定休

往診対応エリア
【横浜市内】
港南区/戸塚区/南区/保土ヶ谷区/西区/栄区/磯子区/中区/金沢区/泉区/瀬谷区/
神奈川区/旭区/青葉区/緑区/都筑区/港北区/鶴見区

【横浜市周辺エリア】
川崎市/大和市/座間市/綾瀬市/藤沢市/鎌倉市/逗子市

TEL:080-7475-5073

※折り返し希望の方はメッセージを残してください

お問い合わせ・予約